フルカラーで超王道スペースオペラ&ボーイミーツガールなマンガ「サザンと彗星の少女」がお勧め

何年かぶりにマンガを買った。正しくはコミックスを買ったというべきなんだろうけど、まぁマンガを買ったのだ。

何を買ったのかというと『サザンと彗星の少女』。お勧めなマンガなので、ざっくりと紹介してみようと思う。

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↑通常版を買った後にサイン本を追加購入したぞ


この作品はリイド社が運営するマンガサイトトーチweb限定で連載されていた全編手書きのフルカラーマンガで、連載終了後の平成30年4月18日に上下巻が発売された。

コミック発売当初は大手書店で原画展やサイン本の販売、購入特典として数種類がセットになったポストカードを配布するなど太っ腹なキャンペーンを展開。しかもコミックスはB6判260ページ超えフルカラーなのにお値段1,058円という破格の設定となっており、編集者&出版社の意欲の強さが窺える。

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↑僕が訪れたのは幕張の蔦屋書店、水彩の原稿は何とも言えぬ美しさだった。

リイド社の漫画といえば大人向けの劇画というイメージが先行するかもしれないけど、サザンと彗星の少女は幼稚園児からうらぶれたオッサンまで誰もが親しめる絵柄なので安心してほしい。

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リイド社といえばこんなイメージの人多いんじゃ?(https://www.leed.co.jp/)

 

★安心感のある主要キャラとニヤリとできる脇役
舞台となるのは地球人を含む多種多様な宇宙人が星を跨いで交流する世界。仕事に追われ、うっかり地球に帰る最終便を逃した主人公のサザンは、喧嘩が強くて男前な謎の美少女ミーナと出会う。ミーナに一目惚れしたサザンは、やがて彼女を狙う宇宙盗賊団との対峙、そして強大な力を持つ謎の組織との戦いに身を投じることに・・・果たして二人の運命は!?ミーナの秘密とは!?そして二人の関係は・・・ッッ!!??

内容はこんな具合の王道スペースオペラ&ボーイミーツガールもので、主要人物の具合もまたいい意味でクサい。クサいといってもヘビーメタルのクサい演奏と同じく良い意味のクサさだ。

<主人公:サザン>
主人公のサザンは手からビームを出すような特殊能力も無ければ、大金持ちでも天才でも美形なわけでもない地球人の若者だけど、惚れた娘のためならば真っ直ぐに突き進み、どこまでも頑張れる馬鹿正直な好青年。服装は一貫して作業着のツナギ。地球への最終便を逃し、駅で佇んでいるところをミーナに拾われ一目惚れ。

 

<ヒロイン:ミーナ>

ヒロインのミーナは見た目も性格も派手&豪快&天真爛漫な美少女で、彗星パワーで飛んだり跳ねたり撃ったりやりたい放題。人との触れ合いを望むが、過去の出来事から孤独でいることを選んだ。SFモノのヒロインらしく「合間合間に陰のある表情をする」上に、未来+宇宙+美女=水着チックな服装というお約束も貫徹。一人駅に佇むサザンに偶然声をかけたことで、彼女の運命は大きく動き出す。

 

<敵役1:ピクニック盗賊団>

敵役はそれなりの実力と実績を持っているものの、何度もミーナの捕縛に失敗している常連さんで、ルパン三世でいうところの銭形警部・・・いや、ふしぎの海のナディアのグランディス一家や、タイムボカンシリーズ三悪人ポジション。

彼らは例にもれず人間臭く、時には凶悪な表情を見せるものの、どこか間抜けで憎めない愛すべき悪党だ。リーダーは親分気質の肥満に悩む豚と、頭の切れる苦労人の参謀、そして実は出来る子のマスコット的存在の3名で構成されており、しつこくミーナを狙う。

 

<敵役2:謎の追跡者>

中盤からは”当然”強大な敵が現れる。巨大な宇宙船を操り、執拗に、無慈悲にミーナを狙う謎の追跡者・・・詳細はコミックを買って読むべし。

 

<脇役ズ>

 このマンガの脇役たちはホントに良い仕事をする。サザンの身内や友人は勿論のことながら、ピクニック盗賊団と同じ盗賊達の言動がまぁ素晴らしい。特に海外の映画やドラマの悪役で脇役なキャラたちって、メインストーリーをグイグイ進める主要人物と同じ時間軸で全然関係ない事をやって勝手に盛り上がったり、メタっぽい言動で読者や視聴者側の気持ちを代弁したりするでしょ?彼らはしっかりその役目を果たす。

 

あぁもう!なんて愛しいクサキャラ達!

互いに無いものを持ち、惹かれ合うも中々噛み合わない主人公とヒロイン。

ヒロインを守るために知恵と勇気と人の好さで突撃する主人公。

そして後から共闘する予感ムンムンの敵役に、強大な力を持つ謎の敵、そしてストーリーを彩るクセのある脇役たち・・・ああ!もぅたまらんね!

 

★誰もが素直に楽しめる

そんなクサキャラ達が繰り広げるのは、誤魔化しやトリックの一切ないド真ん中ストレートな宇宙を駆け抜ける恋愛&冒険活劇。

出会った!

惚れた!

助けられた!

助けた!

泣いた!?俺がキミを守るッッ!

心がぴったんこ!

このシンプルで熱い展開が何とも心地よい。30代半ば以上の人には「ふしぎの海のナディア」のドキドキワクワクがまた味わえるぞ!とでも言えばピンとくるかも。

昨今のテレビドラマやマンガにありがちな、無駄に伏線を張り巡らせるような事もないし、見る者を惑わすだけで終わるような思わせぶりな言動も無い。当然、とってつけたような残酷表現やネタ切れを誤魔化すような超展開、どこの誰を狙ったのか理解に苦しむエロやお涙頂戴、胸糞悪い鬱展開は一切存在しない。

だから頭を空っぽにして素直に読めるし、子供と一緒に楽しむ事だってできるんだね。

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フルカラーだと幼女も夢中!彼女のお気に入りは豚。ブーさんよむのー!とおねだり攻撃がすごい・・・

そんなド直球な物語をブーストするのは鮮やかな水彩フルカラーのイラストだ。キャラクターの表情や場面の動と静、そしてSFファンタジーフルスロットルな背景は僕らその場の空気で包み込み、グイグイとマンガの世界に引き込んでいく。これは単色モノでは中々表現しきれないだろう。

そうそう、登場キャラクター達(特に人類)の顔が万人ウケする絵柄だというトコも重要なポイント。モエモエキュン!みたいな所謂二次元美少女的な絵柄だと端から見向きもしない層は確実に存在するし、そんな絵柄では家族や周囲の目が気になって~という人だっている。「サザンと彗星の少女」は、れはそういった点でも正に全年齢・全方位を対象としているフレンドリーなマンガだってことだね。

 

★どんな人にお勧め?

元も子もないけど、全ての人にお勧め。

なんというか「ワタシの描きたいものを描いてやった!ほらみろどうだ!」という強い思いを感じるマンガなので、読み終わった頃には元気になってます。不思議!

ただ、シンプルかつ王道的作品なので「お約束」を楽しめない人や、ゴチャゴチャした設定が好きな人、考察マニアな人はフーンで終わってしまうかも。

 

★最後に言いたいこと

Twitterで見かけたサザンと彗星の少女の感想には「ジブリみたいでちゅき~&ジブリ好きなら~」みたいなのをチラホラ見かた。彼らがスタジオジブリの何の作品を示しているのかは不明だけど、僕はこれを全力で否定したい。

これは絶対に

ガイナックス案件

違うか

庵野秀明案件だ

 

なんだこのレビューは。全然レビューになってねぇ・・・